男から女に性転換したハルが教えてくれた「有難い人生」の意味

「困難が有るから、有難い人生なのよ」

つらいことがあると、時々、ハルの言葉を思い出します。

ハルは愛する人のために、自分のために、いつも全力投球でした。

どんな時でも愚痴ひとつ言わず頑張るハルは、とても美しい女性でした。

私は彼女から、困難があるからこそ、有難い人生が歩めることを教えてもらいました。

身長175cmの男性が、ミニスカ?!

ハルと出会ったのは、友人が働いている居酒屋でした。

田舎の居酒屋兼スナックといった感じでしたが、女性でも気軽に入れるお店です。なのでごくたまにですが、お店の女性が同席してくれる時があります。

私が初めてそのお店を訪れた時、同席してくれたのが、私の友人とハルでした。

初めてハルを見た時は驚きました。

体の大きい筋肉質の彼は、胸の開いたキャミソールにミニスカートを履いていました。

膝上20cmであろうミニスカの中は生足で、しかもキレイに脱毛されていて、足元はピンヒールのパンプス。髪は肩下のセミロングで、顔は男性なのにお化粧をしていました。

そんな彼女を見て固まっている私に友人は、
「ここで一緒に働いている女の子、ハルちゃんだよ」と、察してと言わんばかりの言葉と目線を送ってきました。

そしてハルからも
「実歩ちゃんっていうの?私の名前はハル。こう見えて女の子なんでよろしくね」
とあいさつしてくれました。

ハルが女性になった日

初対面こそぎこちない私でしたが、ハルと話しているうちに、徐々に彼女の魅力がわかってきました。

ハルは、20歳までは普通の男性だったそうです。

高校を卒業して働き始めてからある男性と出会い、その人に恋をしてしまいました。すごく素敵な男性で、彼のことを四六時中考える日々。

けれどハルも男性です。恋をした男性が、ハルのことを受け入れてくれるはずがないと思っていました。

それでもハルは彼への溢れんばかりの愛が収まらず、悩んだ末に意を決して告白したそうです。

すると彼からの答えはOKでした。

ハルは、彼に受け入れてもらえたのです。

その日の夜は、嬉しさと喜びで一睡もできなかったと言います。そして彼のために、美しい女性になろうと決心しました。

これがハルが女性に目覚めた瞬間です。

女性になるために苦痛に耐える

ハルの彼氏は、いつも深夜まで仕事をしています。帰宅時間が深夜0時近くになることもしばしば。

それを知った私は、ハルに訊いてみました。
「彼氏の帰りがいつも遅いけど、心配にならないの?」

するとハルはこう答えました。
「全然心配してないよ。男はね、愛する人のために頑張りたい生き物なのよ。
だから遅くまで仕事しているのも私のため。私、元男だからさ、男の気持ちもわかるのよね(笑)」

そう言ってケラケラ笑うハルの姿は、すごく幸せそうに見えました。

ある日のこと、いつも笑顔のハルが、どこかつらそうに見えました。
どうしたの?と訊いても、「ちょっと体調が悪いだけ、心配しないで」と軽く流します。

そう言われても心配になった私は、ハルと同じ店で働く私の友人に、なにがあったのか訊いてみました。

すると、女性ホルモン注射の影響だと教えてくれました。

ハルは、週に1回、病院で女性ホルモンの注射をしています。

男性の身体であるハルは、女性特有のしなやかさはありません。

しかも元々筋肉質の身体のようで、簡単には筋肉が落ちません。服の上からでも、二の腕や太ももの筋肉がよくわかります。

なので女性ホルモンの注射を打って、男性ホルモンを抑え、女性の身体に近づけようとしているのです。

注射を受けるにはお金がかかります。

週に1回となると、それなりに出費がかさむでしょう。ただ、お金以外にも問題がもあります。

それは、実はこの女性ホルモン注射は、ものすごく痛いのです。

実際に私は受けたことはありませんが、聴いた話によると、インフルエンザ注射の数倍もの痛みがあるそうです。そんな痛みに耐えて、それでも女性になろうとするなんて、、

無難な人生、有難い人生

今回のハルの体調不良は、注射による副作用ではないかと友人が言います。

元気なときなら平気でしょうが、少し体が弱っているときに注射をしてしまうと、やはり負担が大きくなるのでしょう。

それでも仕事を頑張って、帰宅したら今度は彼のためにごはんを作るハル。彼女はどうしてそこまで頑張れるのか、訊いてみました。

するとハルは、穏やかな顔で話し始めました。

『「無難」って意味わかる?”なにも困難が無い”と書いて無難。

無難の反対の言葉は、有難いという言葉。

有難い」の意味はね、”困難が有る

よく無難な人生っていうけど、そんな人いないでしょ。
人間、生きていればなにかしら困難はあるよ。

その困難が私にとって、男の身体であるということ。
女の身体にするためには、何倍もの努力をしないと。

でも私はそのお陰で、有難い人生を歩めているの。

どこにいても”有難い人生”

あれから10年が経ちました。

ハルは今、私から遠く離れた場所に住んでいます。彼の転勤で、あのあとすぐに引っ越してしまったのです。

ですが、彼女はどこにいても、全力で生きていると思います。

そして、有難い人生を歩んでいることでしょう。

困難が立ちはだかると、ふと思い出す彼女の言葉。

「困難があるから、有難い人生なのよ」

私もいつか、堂々と言えるようになりたいです。




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